菊澤) 本日は宜しくお願い致します。今年で東日本大震災から11年。震災当時の「木の屋」の様子を伺ってもいいですか?
木村) 今までに経験のない大きな揺れ。揺れがおさまったと同時に会社が海の近くにあるということもあって、津波も来るだろうと早い段階で社員も皆避難しましたが、あれほどの津波が来るとは正直思ってもみませんでした。震災から3日ぐらい経って、他の社員と会社を見に行った際には、工場は流され、本社も瓦礫で埋もれ、すべてのものが泥や重油まみれ・・・。壊滅的でした。
菊澤) そんな中で再起しようと思えたのはなぜですか?
木村) 支援物資が何も届かない中、津波で流れてきた「木の屋」の缶詰を食べて頂くことで多くの人を元気にできたこと。また、鯖缶でまちづくりを行っている東京の「経堂」という商店街で泥まみれの缶詰をきれいに洗って「希望の缶詰」に生まれ変わらせて下さったこと。応援してくださる人がいたからこそ再起したいと思えました。
菊澤) ご苦労もたくさんあったと思いますが、それを乗り超えられた理由は何だったと思われますか?
木村) 震災時、私は木の屋に入社してまだ 1 年目。若かったです(笑)。だから、何も知らないからこそ「何とかして会社を復活させて見せる」との情熱で動けたと今は思います。後は社員が一丸となって諦めずに働いてくれたことも支えになりました。
菊澤) 話は変わりますが「木の屋」の企業理念にも「商品開発に全力を尽くす」とあるように、次々新しい商品が生まれていますが、そのアイデアはどこから生まれるのですか?
木村) 社員の思いついたものはまずは試して作ってみる。小さな会社なので、やりたい声があればすぐに動けます。固定概念にとらわれずにチャレンジすることを大切にしています。あといろんな企業さんからタイアップのお話を頂いたら、なるべく挑戦するようにもしています。
菊澤) 先月フジパンからスナックサンド「金華サバカレー」も販売されましたが、他におすすめの商品はありますか?
木村) この春新発売する「金華鯖レモン味」と「鯨ハンバーグ」の缶詰です。鯨ハンバーグは1個でかなりのボリュームのある商品に仕上がっています。ぜひ、食べて欲しいです。
菊澤) 社長に就任されて5年、今お仕事される上で大切にしていることは何ですか?
木村) 人の助けを借りる事です。昔は「自分で何とかする」と力んで、人の話も全く聞かずに突っ走っていました。そんな時に「もっと周りを信じで頼ってくださいよ」と言ってくれた社員がいました。その時に「はっ」と気づかされました。自分一人で出来る事なんて限界がある。社員100名いればそれだけの能力が使えて、みんなの知恵を借りれば、どれだけのことができるのか。人を頼ってこそチームが団結していくのを身をもって感じました。おかげでコロナや先日の地震等、自分たちが想像もできない荒波が次から次へとやってきますが、この団結力で乗り越えられているのだと思います。
菊澤) 今K2のメンバーの後藤君が働かせてもらっていますが、今迄もいろんな若者がお世話になってきました。
木村) たしかにいろんなタイプの子たちがいましたね(笑)。後藤君は非常にまじめで努力家。頑張ってくれています。生きづらさを抱えた若者がうちの会社に居場所を見つけて働き続けてくれることは嬉しいし、私たちも一人一人の力が発揮できるようなサポートはしたいと思っています。
菊澤) 最後に「うんめえもん市」のメンバーに一言お願いします。
木村) 今迄もいろんな方にご支援いただきましたが、こうやって震災を忘れずに今も続けてくださっていることがどれほど大変なことか。だからこそ、そのお気持ちが本当にうれしいです。これからもよろしくお願いします。